
2022/06/06の講演で黒田総裁の発言が話題になっています。
その後謝罪などもしていますが、そもそも、どういう意味で黒田さんはこの発言をしたのでしょうか?
- そのデータ、本当に「値上げ許容度」で合ってる?
- ちょっとマスコミの取り上げ方が過剰気味。
- 問題は、貯金が増えてるではなく、給料が上がってない事。
- つまり、「値上げはするけど、貯金ヤバくなる前にみんなの給料増やせたらいいな」って言いたかったんでしょ
- そもそも「家計の値上げ許容度」なんて言い方したら、そりゃ怒るでしょうよ・・・
そもそも何が起こった?
事の発端は、2022年6月6日に行われた、日本銀行トップの黒田総裁の講演です。
まず、問題になっている発言はココです。
ひとつの仮説としては、コロナ禍における行動制限下で蓄積した「強制貯蓄」が、家計の値上げ許容度の改善に繋がっている可能性があります。
いずれにせよ、強制貯蓄の存在等により、日本の家計が値上げを受け容れている間に、良好なマクロ経済環境を出来るだけ維持し、これを来年度以降のベースアップを含めた賃金の本格上昇にいかに繋げていけるかが、当面のポイントであると考えています。
金融政策の考え方
「日本の家計が値上げを受け容れている」という部分に対して、みんなが怒っているわけですね。
twitterでは、「# 値上げ受け入れていません」がトレンドになったり、テレビやマスコミなど各メディアでニュースになったり、めちゃくちゃ話題になっています。
我が家は「受け入れていない」のだが。
そもそも拒否権あるん? あれば受け入れ拒否するから手続き方法教えて
月給20万だってもらってない人たくさんいるし、ほんとに、2ヶ月7万弱で暮らしてみなよ! この人どんな家に住んでてふだん何食べて、家族はどうしてるんだろうね?
生活必需品だから買うしかないだけ。みんな困ってる。受け入れてるわけない。ふざけるな
高くても買うのは、値上げを受け入れているからではなく、食べなきゃ死ぬからなんですよ…人間は食べ物を食べないと死ぬってご存知ない?
まぁ、「家計が値上げを受け入れている」部分だけを聞いたら、怒りますよね。
みんなの反応をみて、6月7日夜には、
「家計が自主的に値上げを受け入れているという趣旨ではなかった。誤解を招く表現で申し訳ない」
と謝罪しています。
マスコミの切り取り方もひどくない?
「強制貯蓄」
「家計の値上げ許容度」
「家計が値上げを受け入れている」
黒田さんの言葉のチョイスもなかなか強めなのは事実です。
ただ、メディア等の街頭インタビューでは、
『日本の経済動かす、日銀のトップが「家計が値上げを受け入れている」と言ってますが、あなたの家計はどうですか?』
こんな質問でインタビューをしていました。
前後の文脈も無く、こんな事を聞かれたら、
「勝手に受け入れてるとか決めんなよ!」
そう思って当たり前だと思います。
マスコミの取り上げ方、少し過激な気がするのですが、黒田さんの言葉選びが餌を与えていることもまた事実。
黒田さんの発言の真意は?
ただ、黒田さんの言いたかった事は果たして、
「みんな貯金が増えたから、値上げしても大丈夫。きっと受け入れてくれるよ!」
なのでしょうか?
前後の文脈・元になった調査データなどから見ていきます。
「家計の値上げ許容度」って何?
まず黒田さんは、東京大学の渡辺努教授の調査結果のデータを元に話しています。
いつも行ってるスーパーのいつも買う商品が10%値上がりしたらどうする?
- 2021年8月の結果
「他の店に行って買う」 57%
「その店で買う」 43% - 2022年4月の結果
「他の店に行って買う」 44%
「その店で買う」 56%
「その店で買う」=「10%の値上げを受け入れられる」
去年より「その店で買う」を選択した人が13%も増えた事が、
「家計の値上げ許容度が改善された」という発言につながっています。
ただ、この結果はもっと細かく設定されていて、
「その店で買い続ける。ただし、買う量を減らしたり、買う頻度を落としたりして節約する」これに当てはまると答えた人は、
2021年で50%強から、2022年では60%超で、10%も増えています。
あれ?デフレの時によく耳にするフレーズが聞こえてきました。
また、この調査を行った教授は「値上げ耐性」と言っていて、「値上げ許容度」とは言っていません。
「耐性」と「許容度」は、似てはいるものの、同じ意味でしょうか?
この調査結果の理解は
「値上げ耐性のUP」=「日本の家計が値上げを受け入れている」
で合っているのでしょうか?
まぁ、黒田さんも「この結果自体は、相当の幅を持ってみる必要はありますが、」という前提で話をしているので、この結果が全てではないという認識はあると思います。
「強制貯蓄」って貯金を強制されたっけ?給付金はもらったけど
この結果自体は、相当の幅を持ってみる必要はありますが、ひとつの仮説としては、コロナ禍における行動制限下で蓄積した「強制貯蓄」が、家計の値上げ許容度の改善に繋がっている可能性があります。
金融政策の考え方
「強制貯蓄」って、言いたいこと分かりますが、なかなかパワーワードですね。
つまり、
コロナ期間に、緊急事態宣言とかまん延防止条例とかあった影響で、
旅行とか遊びにいけなくなったリ、飲食店・居酒屋に行けなくなって
支出が減ったから、自動的に貯金が増えた。
っていう事ですね。
確かに、日本の「家計金融資産」は約2000兆円で、過去最高を記録しているそうです。
日本全体で考えると、資産が増えているのはデータとして正しいみたいです。
給料が増えないニッポン
貯金が増えたのは支出が減ったからで、収入は増えていないという事がポイントです。
過去30年間、世界は経済が成長するのに合わせて、給料も順調に増えていっています。
日本だけは給料が全く増えていません。
経済の安定的な成長には「インフレ率2%」が必要と言われています。
つまり、「物価も給料も、世界を回るお金がゆっくり増えていくこと」が望ましいと言われています。
世界中の物価が2%上昇する中で、すでに日本だけ取り残されているのが現状です。
賃金が上がらない。けど、物価は上がっていく。
つまり、日本が貧乏になっていき、「安いニッポン」の出来上がりです。
日本の景気が良くなるためには、少しの物価の上昇は仕方がない。けれど、賃金の上昇が絶対に必要です。
つまり何が言いたかったの?
今までの内容を含めて、今回の発言を見ていきます。
いずれにせよ、強制貯蓄の存在等により、日本の家計が値上げを受け容れている間に、良好なマクロ経済環境を出来るだけ維持し、これを来年度以降のベースアップを含めた賃金の本格上昇にいかに繋げていけるかが、当面のポイントであると考えています。
金融政策の考え方
「強制貯蓄の存在」→ データとして、貯金は増えているので事実。
「日本の家計が値上げを受け入れている間に」→ 色々思うトコはあるけど、多分、増えた貯金が値上げでいつもの水準に戻るまでの間に。
「良好なマクロ経済環境を出来るだけ維持し」→ 企業の収益が増える事で日本全体の経済を良くして。
「来年度以降の賃金の本格上昇にいかに繋げていけるか」→ 企業から払われるみんなの給料UPを目指してます。
簡単に言うと、
「世界情勢的に値上げはしょうがないけど、貯金ヤバくなる前にみんなの給料増やせたらいいな」
という意味の発言だと思います。
つまり、目標は「みんなの収入UP」を謳っています。
まとめ
言い方・言葉のチョイスがキツかったり、データの読み方合ってるの?など、色々思うトコロはありますが、
「経済的な成長」と「給料のUP」を目指していることに違いはありません。
黒田さんが話しているのは決して1人ひとりのお財布の中身ではなく、日本全体のマクロ経済の話です。
そこに、様々な環境に置かれている1人ひとりの話を持ち込むのは少し乱暴な気がします。
ただ、こうやってハッシュタグがトレンド入りとかする事で話題になり、日銀総裁が謝罪しなければならなくなったり、経済を回している偉い人達に「国民は苦しんでるよ。」と伝えられる事は、とても良い時代だと思います。
今後、「本当に、給料が上がるのかどうか。」が大事なポイントですね。
- そのデータ、本当に「値上げ許容度」で合ってる?
- ちょっとマスコミの取り上げ方が過剰気味。
- 問題は、貯金が増えてるではなく、給料が上がってない事。
- つまり、「値上げはするけど、貯金ヤバくなる前にみんなの給料増やせたらいいな」って言いたかったんでしょ
- そもそも「家計の値上げ許容度」なんて言い方したら、そりゃ怒るでしょうよ・・・